【相続コラムNo.2】お墓を守る相続人には遺産を多く分けなければならないか
お墓を守る相続人には遺産を多く分けなければならないか
弁護士・相続診断士の佐藤です。
時折、他の相続人から「自分はお墓を守るのだから多めに遺産をよこせ」と求められて困っているといった相談を受けることがあります。
解説
お墓を守ったり、祖先を祭ったりすることを、法律上は祭祀(さいし)といいます。祭祀に関係する財産(祭祀財産)には墓地や墓石、位牌、仏壇、仏具などが含まれますが、これらは相続財産には当たりません。
祭祀財産の承継は、実は遺産分け(遺産分割)とは無関係なのです。祭祀財産の承継者は、通常は遺言により、遺言がない場合はその地方の慣わし(慣習)に従って決まります。さらに、祭祀に関する慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所の審判によって決まります。
そこで、タイトルのような相談が出てくるわけですが、結論から言うと、祭祀承継と遺産分割は上述したように無関係なので、他の相続人が祭祀財産を承継したからといって、その者が当然に他の相続人よりも多くの遺産を手に出来る訳ではありません。また、祭祀を営むための将来の費用を相続財産から優先的に取得出来る訳でもありません。ですから、相談に来られる方は、自己の法定相続分に基づいた主張を清々と行えば良いのです。
もっとも、遺産分割とは別に、祭祀財産を承継する者との間に争い事があって、紛争の抜本的な解決を図る必要がある場合には、一定の配慮をしてこの者に多めに遺産を分割してやるということはあり得ます。